清水建設、水素エネルギー利用システム「Hydro Q-BiC」のCO2削減効果を実証

清水建設(株)<社長 井上和幸>と国立研究開発法人産業技術総合研究所<理事長 石村和彦>は、郡山市総合地方卸売市場(福島県郡山市)内で実証運用を進めてきた建物附帯型水素エネルギー利用システム「Hydro Q-BiC」のCO2削減効果について、2019年7月から2年間の連続運用の結果、電力由来のCO2排出量を未導入時と比べて53%削減できることを確認しました。

 

両者が共同開発した「Hydro Q-BiC」は、太陽光発電の余剰電力を利用して水素を製造・貯蔵し、必要時に抽出して電力に変換する最先端の水素エネルギー蓄電設備です。システムの特長は、水素の貯蔵に常温常圧で水素を吸蔵・放出できる独自の水素吸蔵合金を利用することです。この合金は着火しても燃焼せず、非危険物として使用できます。このため、安全かつコンパクトに水素を貯蔵でき、一般施設にも容易に展開できます。

 

実証運用では、同市場の管理棟(床面積:4,310m2、電力需要:最大100kW)にHydro Q-BiCを適用し、日常的な運用を通じて、システム導入に伴うCO2削減効果の定量評価を行いました。管理棟に導入したシステムは、総出力64.5kWの太陽光パネル、製造能力5Nm3/hの水素製造装置、水素貯蔵量80Nm3の水素貯蔵装置、出力3.5kWの燃料電池4台、電力貯蔵量10kWhの蓄電池2台で構成され、各装置の運転を清水建設が開発した建物エネルギー管理システム(スマートBEMS)で一元的に監視・制御することで、エネルギー利用の最適化を図りました。

 

システムの運用にあたっては、6時~18時に太陽光パネルで発電した電力のうち建物で直接使用できない余剰電力(最大30kW)を利用し、1時間に最大5Nm3の水素を製造・貯蔵。管理棟の電力使用ピーク時間帯の朝5時~9時に、水素を使った燃料電池からの発電と蓄電池からの放電により、最大34kWの電力を太陽光パネルの発電に上乗せして管理棟に供給し、ピーク電力の抑制を図りました。その結果、電力由来の年間CO2排出量をシステム未導入時の想定値から約53%、太陽光発電のみを導入した場合と比べて約21%削減できることを確認しました。

 

また今回の実証運用では、オンサイトで創出した水素に加えて、外部から持ち込んだ水素の貯蔵・活用技術の実証にも取り組みました。具体的には、加熱・冷却性能に優れた急速充填用タンクを新規開発し、産業技術総合研究所の福島再生可能エネルギー研究所(FREA)で製造したCO2フリー水素の輸送・充填試験を実施。その結果、定格100Nm3の水素充填を1時間程度で完了させることに成功しました。これにより、水素の製造場所が離れている場合でも、持ち込み水素による蓄エネルギーが可能になり、さらなるCO2削減を実現できます。

 

Hydro Q-BiCはすでに、21年5月に竣工した清水建設北陸支店(金沢市)の社屋内に実装され、実用化のステージに進んでいます。今後、メーカー等とのアライアンスの拡充を通じて導入コストの縮減を図り、適用案件の拡大につなげていく考えです。

 

 

≪参 考≫

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郡山市総合地方卸売市場に導入した実証設備

 

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急速充填用タンク

 

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参照元:PRESS CUBE