清水建設(株)<社長 井上和幸>は、立命館大学・西浦敬信教授、順天堂大学大学院・平澤恵理教授と共同でこのほど、複数のアナウンス音声が混在する室内空間において、必要な人に必要な音声情報を選択的に提供できる「局所音場制御システム」を開発しました。
このシステムは、超指向性スピーカーと、スピーカーからの放射音を任意の方向に反射させる音響調整板で構成されます。利用者は、音響調整板の設置方向等を調整することで、特定の領域に限定してアナウンス情報を伝達できるようになります。
多くの人が利用する病院施設等では、施設利用者を誘導する各種アナウンスが同時に放送される場合があります。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、感染防止対策に関する諸注意を施設利用者にアナウンスする機会も増えています。ただ、これらの音声が同一空間内で混在すると必要な情報を必要な人に届けることが困難になります。こうした弊害を回避するための対策として、スピーカーの配置や設置数を工夫したり、間仕切りを設置したりする場合もありますが、明瞭な音声情報を選択的に利用者に提供するのは容易ではありません。局所音場制御システムは、こうした課題を解決する技術として開発したものです。
本システムに利用する超指向性スピーカーは、広く空間に音声を拡散させる汎用スピーカーとは異なり、放射音がビーム状に伝播するため、一定の範囲に絞って音声を届けることができます。他方、スピーカー音声を反射させる音響調整板は、複数の曲面パネルを並列に配置した反射構造体で、曲面パネルの配列を横向きにすると反射音の指向性が持続し、縦向きにすると反射音に拡散性を付与することができます。利用時には、アナウンス音声を届けたい領域に応じて音響調整板の設置角度やパネルの配列方向を調整し、スピーカーの音波が伝播する方向・範囲をコントロールします。
本システムの音場制御機能については、順天堂大学医学部附属順天堂医院(東京都文京区)に設置された新型コロナウイルスワクチン職域接種会場内で実施した試験適用の結果、明瞭なアナウンス音声を設定領域に限定して届けることができ、領域外への音漏れも最小限に抑制できることが確認できました。なお、システムの開発にあたっては、当社が施設空間内の音場制御手法や音響調整板の開発、立命館大学が超指向性スピーカーのデバイス制御を担当しました。
当社は引き続き、局所音場制御システムの適用実証を進めながら導入ニーズを探り、施設空間内における音環境の改善に寄与していく考えです。
≪参 考≫
超指向性スピーカー
音響調整板(左:横向き、右:縦向き)
局所音場制御システムの導入イメージ
音響調整板の角度を変えた場合の音圧分布(左:横向き、右:縦向き)
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参照元:PRESS CUBE