大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、病院内で用いる電子カルテや生体情報モニタなどに利用されている電波の環境を可視化するモニタリングシステム「T-Hospital Wireless Viewer」※1(図1参照)の機能拡張を行いました。
これにより、病院巡回中の病院スタッフが電波を自動計測し、モバイル等を利用して病院内外から電波環境を把握できます。今回、病院内での試験運用を行った結果、入院患者の生体データなどの重要情報を含んだ医療機器の電波が届かない等のトラブルを未然に防ぐことが可能であることも検証できました。
昨今、医療機関は情報化が進み、患者の電子カルテや生体情報モニタなど、電波を利用した医療機器の導入により利便性が向上しています。しかし一方で、医療機器の電波が届きにくい状況や無線中継機などの通信機器の増加による電波干渉など、無線通信が不安定になる事象も顕在化しています。これらを受け、電波環境協議会では手引き書※2を作成し、トラブルなく医療機器を利用できる安定した電波環境を維持するため、電波の届く範囲、強さ、電磁ノイズ、無線中継機の混雑状況など電波の状態を総合的に把握し、また、トラブルが発生した場合には、病室単位での調査、原因究明、対策検討を行うことを勧めています。
今回、機能拡張した「T-Hospital Wireless Viewer」を用いて病院内で実施した試験運用では、病院スタッフが日常利用する医療用台車に小型の電波計測器を搭載するだけで、手引書で推奨される電波管理に必要な病室毎の電波を自動計測し、遠隔からその情報を把握できることが確認できました。
【試験運用概要】
・時期:2021年3月
・場所:新城市民病院(院長:横井 佳博)の1病棟(34室・59床)
・方法:病院スタッフが使用する医療用台車10台に電波計測器を搭載し、各病室の巡回中に、時々刻々と変化する電波を自動計測
【検証結果】
・医療用台車に電波計測器を搭載することで病院スタッフが通常業務に従事しながら自動的に全ての病室における電波の強さや電磁ノイズなどが計測でき、そのデータを電波の管理に関わる関係者が共有できることを確認しました。(図2参照)
・これまでトラブル発生時には専門業者の電波計測により対応してきましたが、今回、病院スタッフの¨通常業務¨に行う計測から電波状況を常に把握できることを確認しました。この結果から、トラブルを未然に防ぐための安定した電波環境の維持やトラブル発生時の原因・対策の検討に本システムの利用が期待できます。
今後、当社は、新城市民病院(65室・110床の2病棟を対象に約6カ月間)と埼玉医科大学国際医療センター(20室・44床の1病棟を対象に約3か月間)において、さらに試験運用を行い、本格運用に向けた本システムの検証を継続します、また、2022年下期より、病院内での電波管理に関する遠隔サポートサービスの実施を予定しており、情報化を推進する医療機関での業務効率化と安全・サービスの向上を図ってまいります。
図1 電波環境モニタリングシステム概要
図2 本システムの病室巡回による自動計測イメージ
※1 T-Hospital® Wireless Viewer:
電波環境シミュレーションと電波調査・計測に関する各種技術を組み合わせ、病院内の電波環境を可視化するシステムであり、2019年に埼玉医科大学保健医療学部 加納隆客員教授による学術指導のもとで開発。
※2 電波環境協議会による手引き書:
「医療機関において安心・安全に電波を利用するための手引き(改定版)」電波による電子機器等への障害を防止・除去するため手引き書、学識経験者、関係省庁、業界団体等により構成された協議体である電波環境協議会により制作。
参照元:PRESS CUBE