大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、三菱電機株式会社(社長:漆間 啓)と共同で、マイクロ波を用いたワイヤレス給電システム「T-iPower Beam」を開発し、その実証実験を開始しました。
本システムはスマートシティやZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)に必要不可欠な設備であるセンサや、モバイル機器などのワイヤレス化、バッテリーレス化を推進し、センサ等の導入・設置を効率化することで、スマートシティなどの実現に寄与します。
昨今、スマートシティなどの実現に向けて、建物内に各種センサやモバイル機器などの設備を設置する動きが加速しています。これらの設備は建物内の温度・湿度などの環境情報や建物利用者の人流計測のほか、空調・照明機器や警備・サービス等に携わる自動ロボットなどの制御に用いられており、スマートシティやZEBには不可欠な設備です。さらに、これらの施設は、センサやモバイル機器を大量に設置する必要があるため、電源・通信設備の配線や、設備スペースの確保、バッテリー充電や交換などの作業が必要で、それらのメンテンナンスにかかる作業やコストが課題とされていました。
そこで、大成建設は三菱電機と共同で、建物内で稼働する自動ロボットからマイクロ波を発して、最大25Wの電力を送信し、センサやモバイル機器などにワイヤレスで給電することが可能となるシステム「T-iPower Beam」を開発しました。自動ロボットに設置した小型送電装置からマイクロ波を用いて、ワイヤレスで建材一体型受電装置に給電され、そこからセンサ等へ電力を供給します。これにより、センサ等のワイヤレス、バッテリーレス化が可能となります。
本システムを導入することにより、配線等のメンテナンスにかかる作業やコストの課題解決につながるセンサ等のワイヤレス化、バッテリーレス化が加速することで、スマートシティ等の実現に寄与します。
本システムの特長および実証実験概要は以下の通りです。
【特徴】
(1)マイクロ波の拡散を低減し給電
マイクロ波による給電の課題は、送電時にマイクロ波が拡散してしまうことで、効率よく受電できないことにありました。そこで、指向性の高いビームを形成できる5.7GHz帯を使用し※1、ビームを制御することが可能となるマイクロ波ワイヤレス送電装置を用いて、受電装置以外の場所への電波拡散を低減し、建物内外への影響を抑制して給電します。
(2)電波拡散を抑制する建材一体型受電装置により電波の漏洩を防止
マイクロ波ワイヤレス送電装置から発せられる電波の拡散を抑制する建材とマイクロ波ワイヤレス受電装置、バッテリーを一体化した建築内装材を用いて、電波の漏洩を防止し、建物内外への影響を抑制します。
【実証実験概要】(図1参照)
実証実験場所
大成建設株式会社 技術センター 人と空間のラボ(ZEB実証棟)
実施実験期間
2021年12月~2022年2月
実証実験内容
①マイクロ波ワイヤレス送電装置から電波を放射し、建物内外の電波強度分布測定により、建物内の周辺機器への影響の可能性や建物外への電波漏えい状況を確認
②電波吸収体と受電装置と一体化した建築内装材を天井面に設置した状況おいてシミュレーションを行い、建物内外での電波強度の削減状況を確認
【本システム導入により期待される効果】
・スマートシティやZEBに必要不可欠なセンサや建物内設備のワイヤレス化、バッテリーレス化が可能となり、配線や設備のスペース確保、バッテリー交換作業が不要となる ことで、センサ等の導入・設置を効率化することで、スマートシティ等の実現に寄与 します。
・マイクロ波ワイヤレス送電装置を警備や清掃などを行う移動式サービスロボットに実装することで、ロボット稼働中にバッテリー残量の少ない建材一体型受電装置に効率よく電力を供給することができ、安全で効果的な施設管理・運用が可能になります。
今後、当社は三菱電機と協力し、送電電力量をさらに増強したマイクロ波ワイヤレス送電装置を複数台の移動式サービスロボットなどに搭載し、建物内での様々な用途に対して、マイクロ波ワイヤレス給電を実施した場合の運用効果や安全性の実証を進め、社会実装に向けて取り組んでまいります。
図1 実証実験状況
図2 マイクロ波ワイヤレス給電システムの活用イメージ
※1総務省「空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの運用調整に関する検討会」
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban16_02000260.html
参照元:PRESS CUBE